東日本大震災から10年が経ちました。
当時、私は大学病院に勤めていました。薬剤部から出たところに患者さんの待合室があるのですが、そこでのテレビ放送にくぎ付けになりました。
信じられない光景を見、待合室の患者さんも誰一人言葉が出ず、シーンとしたまま、かつ張り詰めた緊張感でテレビに見入っていました。
ハッと我に返り、薬剤部長に報告に行きました。「先生、大変なことになっています!」
ヒトの記憶とは不思議なもので、いい思い出も覚えていますが、嫌な思い出、つらい思い出、衝撃的な思い出も鮮明に覚えています。
小さいころデパートのおもちゃ屋さんで、父親と思って手をつないだら知らないおじさんだったこと、北海道に旅行に行って祖父と湖で白鳥ボートに乗った時、お気に入りの帽子が風で飛ばされて湖に沈んでしまったこと、テストの点数で赤点をとってしまったこと、中学で白い靴下を履く決まりだったのに、寝ぼけて黒い靴下を履いて行ってしまったこと、それをとても厳しい教育主任の先生に怒られるとビクビクしていたら「お前バカか」と笑われるだけで済んだこと・・・などなど(笑)
9.11のアメリカの同時多発テロの時は、私は大学生の時で、友人たちとよく行く焼肉屋で肉を焼いていました。スマホを持っている友達が、「アメリカ、大変なことになってるよ」といい、でもスマホを持っていない他の面々はわからないので「へぇ~」とそのまま肉を食べ、そして家に帰ってテレビをつけたときの衝撃。
他にも家族の死、友人の死、患者さんの死。
たくさんのつらい思い、嫌な思い出、失敗、恥がたくさんあります。
きっと誰でもそうだと思います。
それを忘れてしまえばどんなに楽だろう、って思うときもありますが、その記憶が消えてしまったらどんな人間になっているだろう、とも思います。
齢を重ねるにつれ思うのが、「自分はなぜ存在するのか」ということではないでしょうか。
読む本も変わってきて、歴史の本を多く読むようになりました。
近年では「ホモ・サピエンス全史」は話題になりましたね。
宇宙にも以前より興味が大きくなってきました。
小説では、「オリジン」という大好きな小説を読みなおしました。
ダン・ブラウンという「ダヴィンチ・コード」「天使と悪魔」などのラングドン教授シリーズの本です。映画では、主演はトム・ハンクス。
もう、本を読んでいてもトム・ハンクスのイメージしか出てきません。ピッタリ。
少しネタバレになりますが、その「オリジン」は「origin(起源)」で、その題の通り、「ヒトはどこからきて、どこへ行くのか」がテーマです。
そのことで重大な発表をしようとした友人が殺害され、ラングドン教授がその友人が残した人工知能のウィンストンとともにその謎に挑みます。
ラストはゾクッとします。とても興味深い本です。
人類は120歳くらいまで生きられるような時代がきそうです。世界中で今ベストセラーになっている本。
「LIFE SPAN 老いなき世界」
そうなると、人生設計がまた大変ですね。
でも星はいつか無くなるそうなので、人類もいつかは宇宙のどこかに移住しないといけません。それまで人類が存続していれば。
いつか宇宙を自由に飛び回れるのでしょうか。でもスターウォーズのように宇宙でも戦争では嫌ですね。もっともスターウォーズは「遠い昔 はるかかなたの銀河系で(A long time ago in a galaxy far, far away....)」の話ですが(笑)
今の宇宙科学者でも宇宙の謎は生きているうちに解明できないでしょう。でもスペインのサグラダファミリア完成にはあと100年かかるといわれていたのに最近では2026年に完成とかもいわれているようです。新型コロナの影響で遅れているみたいですが、人類の技術の進歩は驚異的です。日本のはやぶさ2が小惑星「リュウグウ」へ、アメリカのオシリス・レックスが小惑星「ベンヌ」へ、そして火星探査車「パーシビアランス」が火星に到着しました。
とてもワクワクしています。私も生きているうちに、生命誕生の謎、宇宙の謎を少しでも多く知りたいと思います。
東日本大震災のような大災害や新型コロナウイルス感染症、テロや他国での暴動など、いろいろ死生観を考えてしまいます。自分の生きる意味はなんだろう、と。
ただその一方で、家族や友人、患者さんの笑顔が見れればそれだけでもいいかな、とも思ったりします。そして、それに加え、宇宙や生物のことを学んだり、本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、音楽を奏でたり、美味しいものを食べたり、やりたいことがたくさんあるのは幸せなことだろうとも思うのです。
勢島 英
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